空気読めすぎてツライ? 繊細で傷つきやすい“HSP”のあなたを活かす術

●5人に1人は「HSP」と呼ばれる繊細で感受性の強い気質の持ち主。
●HSPは普通の人が見過ごしてしまうような些細なことを、敏感に察知する感性を持っている。
●その繊細さゆえに生きづらさを抱えてしまうこともある。
●セルフコントロール術を身に付ければ、その特性を活かして社会生活において高い能力を発揮できる。

「HSP(Highly Sensitive Person)」という言葉をご存知でしょうか。HSPは日常のさまざまな刺激に対して過剰に反応しやすい、繊細で感受性の強い人格を指す概念で、1996年にエレイン・N・アーロン博士によって提唱されました。アーロン氏の著書『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』によると、全人口の約20%の人々がHSPに当てはまるとされています。

かくいう私も、同書により自分がHSPであることを知った一人です。HSPは多くの人が見過ごしてしまうような、些細な事象や言動が気になってしまうという性質を持って生まれています。これは、プラスにもマイナスにも働く諸刃の剣であり、ゆえに時に打たれ弱く、傷つきやすい一面を持っていることも事実です。

あなたが日頃悩んでいることも、実はHSPに起因しているかもしれません。しかし、この繊細さをうまくコントロールする術を身に付けることができれば、社会生活において高い能力を発揮できる可能性を秘めているのです。

私はHSPであることを自覚した際にブログでまとめた記事が多く読まれ、以来この特性をいかに強みに変えていくかを日々考え、巡らせてきました。本稿では「繊細さを武器にする」をテーマに、HSPの強く賢く生きる術を提案してみたいと思います。

HSPは病気ではなく“生まれ持った気質”

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アーロン氏の公式サイトに、自分がHSPであるかを知るためのセルフチェックが載っているのでテストしてみましょう。27の質問のうち14個以上当てはまれば、あなたはHSPである可能性が高いといえます。

HSPは持って生まれた気質であり、病気ではありません。世の中の20%、すなわち5人に1人がHSPであるというアーロン氏の研究結果からもわかるように、決して珍しいわけではないのです。では、HSPとそうでない人の具体的な違いとは何でしょう。それは、受け取った情報に対する「感度の高さ」と「許容量の少なさ」です。自身もHSPであるデンマークの心理療法士イルセ・サン氏は『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』の中で、これらをハードディスクに例えています。

HSPは細かいところまで感じ取り、受け取った情報が心の奥深くまで届きます。HSPは大いなる空想力と、物事を生き生きと思い描く想像力を備えていて、外界から得た情報を元にさまざまな思考や空想を広げます。そのため、HSPのハードディスクは、ほかの人たちよりもすぐにいっぱいになり、過度に刺激を受けたと感じます。

一つの事象に対して、HSPでない人が受け取る情報量を1とすると、HSPの人が受け取る情報量は5にも10にもなるのです。例えば職場の同僚と朝の挨拶を交わしたとき、相手の反応がやけにそっけなく感じられたとします。HSPでない人は「機嫌が悪そうだな、寝不足か?」と思うくらいでしょう。しかし、これがHSPの人だと「何か自分に対して怒っているのだろうか?そうだ、昨日のあのことかもしれない。どうしよう嫌われてしまったかも、気まずいなぁ……」などと複雑に考えてしまうのです。

HSPの特性が、諸刃の剣になるという意味がわかっていただけたでしょうか。データをやたら高解析度で取り込んでしまうために、容量がすぐにいっぱいになってしまうわけです。そして、自分で取り込みすぎたデータを処理しきれずに、過度な神経の高ぶりを引き起こすため、生きづらさを感じる要因となるのだと考えられます。

少数派であるがゆえ不当に評価されてきた

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私は子供の頃、内向的で一人で遊ぶほうが好きなタイプでした。両親や周りの大人たちは、そんな私を心配して「もっとみんなと元気に外で遊んでほしい」と願っていたことと思います。HSPの子供は、そういう大人たちの空気を察知します。そして期待に添うことのできない自分を心のどこかで恥じながら成長していき、これが自尊心の低さにつながっていくのです。

世の中は、HSPではない80%の人たちに合わせておおむね設計されています。また、ポジティブで競争社会に打ち勝っていくタフなタイプが、理想的な人物像とされているように思えてしまいます。HSPがそれらの性質をまったく有してないとは言いきれませんが、あらゆる場面でどうしても少数派の立場に立たされ、引け目を感じやすいHSPが「自分は他の人たちと違う」と生きづらさを抱えてしまうのは、ある意味当然なのです。

HSPとしての自分と向き合う

イルセ氏の研究によると、HSPは自尊心の低さゆえに、自分自身に高いハードルを課し「それをクリアできなければ他人から愛されない」と考える傾向があるようです。しかしそれを続けていくことは、自分の首を絞めることでもあります。自分の周りにいる人たちは、「無理して背伸びした自分を好きでいてくれているからかも」という疑念が拭えないからです。
必要なのは、無意識に自分に課したルールを取り払い、ありのままの自分を解放していくことです。それには、恐怖と困難がつきまとうことでしょう。実際に離れていく人たちもいるかもしれません。しかし、本来のあるべき姿の自分に出会えたその先に見える景色は、今まで見たことのないものだと私は思います。

ここからは私たちHSPが、自分を抑えることも痛めつけることもなく、快適に生きていくための指針を考えていきましょう。

HSPを活かしストレスフリーに生きるための3つの術

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【1】天性の聞き上手を活かす

経験上、HSPは一見寡黙であまり話し好きではない印象を持たれることが多いようです。しかし、大勢の中で表面的に群れることが得意でないものの、実は1対1の人間関係に強く、一度気を許した相手と深い話をすることは好みます。そして話し相手は、あなたの天性の共感力に心地良さを覚え、話を聞いてもらえることがうれしいと感じるのです。

ただし、ここで重要なのは単なるイエスマンにならないことです。相手が気持ちよく話すことばかりに気を使いすぎてしまうと、あなたの負担になるばかりか逆にストレスを感じてしまいます。あくまで対話であることを意識しつつ、段階を踏んで相手と深い関係を築いていくことができるはずです。そうして積み重ねた人脈は、いつかあなたを救う財産になることでしょう。

【2】あえて空気を読まない

空気を読みすぎて、その場にいる一人たりとも気分を害させたくないと気を使ってしまうHSP。しかし、誰も他人を完全にコントロールすることはできませんし、相手の怒りや痛みにあなたが責任を負うことも不可能なのです。無意識のうちに自分に強いた不必要な負荷を、取り除く意識を持ちましょう。そして、時には言うべきことを毅然と伝える勇気も大切です。HSPは思慮深く、言葉を選んで発言できる能力を備えています。あなたの発言は重みを持って相手の胸に届き、気づきを与えるでしょう。

【3】自分の感性を活かせる分野で自分の能力を楽しむ

イルセ氏は前述の著書で、HSPの能力を7つ挙げて解説しています。そのうちのひとつが、「想像力が豊か」なことです。常に自分の内面と対話しているHSPは、インスピレーションにあふれ、芸術やクリエイティブの分野で能力を発揮するとしています。これと決めたことに対して、じっくりコツコツ創り上げていく天賦の才能を持っているため、必ずしもそのような分野の職業に就かないとしても、ある程度自分の裁量で仕事を進められる環境で高い能力を発揮します。

意識を他人から自分へ

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一口にHSPといっても、人それぞれ千差万別です。ここで挙げた手段が、すべてのHSPに合うとも限りませんし、自分の強みを知り、活かしていくには試行錯誤するしかありません。HSPは良くも悪くも、自分より他人を第一に考えてしてしまいがちです。意識を自分軸に向けることが、第一歩といえるでしょう。

この記事を書いた人

空気読めすぎてツライ? 繊細で傷つきやすい“HSP”のあなたを活かす術

藤崎 献人

ライター

大阪府出身、在住。
得意分野はメンタルヘルス、楽曲考察、書籍レビューなど。自身のうつ病経験から、「生きづらさ」に光をあてた文章を書きたいとの思いで、ライター活動を開始。
お酒とドビュッシーの音楽が好き。作曲活動も行っている。

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