まずは店名を確認!本場の味が楽しめるイタリア料理店を見極める4つのポイント

●日本料理とイタリア料理には共通点が多く、日本人は本格的なイタリア料理を作るセンスがもともと備わっている。日本に山ほどあるイタリア料理店の中から本格的かつ美味しい店を見極めるポイントを、イタリアの文化的背景を交えつつ4つに絞って紹介していく。
●1つ目は、店名。例えばイタリアの「レストラン」を指す「リストランテ」など、イタリアの食を感じさせるワードが入っている店は、イタリア料理に対する思い入れが感じられ、料理も本場の味を再現している可能性が高い。
●2つ目は、食前酒と前菜のラインナップ。イタリアには「アペリティーボ」という食前酒と前菜を楽しむ独自の文化がある。前菜の役割は「これから始まる食事の食欲を増進させること」とされており、美味しい料理を楽しむ第一段階の前菜のラインナップは重要である。
●3つ目は、メイン料理の有無。イタリア料理店でパスタやピザを食べると食事を終わらせてしまうケースがあるが、本来イタリア料理のメインは肉や魚である。手間と時間のかかるこれら「メイン」のメニューが豊富だったり、積極的に提案してくれたりする店は信用できる。
●4つ目は、エスプレッソのクオリティ。イタリア人にとって食後のエスプレッソは不可欠だが、高価なエスプレッソマシンと技術が必要なため、日本ではハードルが高い。食後のエスプレッソにまで配慮が行き届いている店は良店と言える。
●筆者もイタリア人とともに日本のイタリア料理店を巡ったことがあるが、皆そのレベルの高さに驚いていた。上記4つのポイントを参考に、本場さながらの美味しいイタリア料理店を探してみて欲しい!

イタリアのパスタの「アルデンテ」。日本のラーメンの「バリカタ」。この2つの単語はどちらも麺を茹でる際に芯を少し残し、その食感や食べごたえを楽しむ食べ方を指す。この「芯を残す」という感覚、実は日本とイタリア以外ではあまり一般的ではない。多くの国で麺は柔らかい状態で食べられており、「芯が残った状態」は中途半端と感じる人種が多い。
麺の茹で方以外でも日本とイタリアは食に関しては共通点があり、どちらも海に囲まれているため魚介を使った料理が多いこと、四季があるため旬の食材を使うことなどがある。食の好み・感覚が近いということは、お互いの料理を理解しやすいバックグラウンドがあるということだ。つまり、日本人はイタリア料理を上手に再現し楽しむ感覚を持っており、日本にはハイレベルなイタリア料理店が多く存在する。
そこで当記事では、数々のイタリア料理店と多くの仕事をしてきた筆者が、日本で本場の味を楽しめるイタリア料理店の見極め方を紹介する。

【1】「リストランテ」「トラットリア」「ピッツェリア」など。まずは店名をチェック

まずは店名を見て、そのお店がどのくらいその国の料理に思い入れがあるか、などが多少なりとも見て取れる。海外旅行に行った際、現地の和食店で「SAMURAI」や「FUJIYAMA」などという店名を見かけたことはないだろうか。こういったいかにもベタな名前の和食店はハズレであることが多い。なぜなら、彼らは日本に対する思い入れや知識がないために、安直な日本っぽいワードで店名を決めているからだ。
一方、海外で「居酒屋」や「食堂」などといった単語の入った店名を見かけたらどうだろう。なんとなく日本に詳しそうだし、もしかしたら日本で修行したことがあるのかなと感じるのではないだろうか。少なくとも「SAMURAI」よりは美味しい和食にありつけそうである。

つまり、店名にイタリアの食を感じさせるワードが入っていれば信頼できる可能性が高いということだ。少し例をあげてみる。

「リストランテ」:レストランの意味。主に高級店~中級店。
「トラットリア」:大衆食堂の意味。リストランテよりカジュアルな店。
「ピッツェリア」:ピザの専門店。「ピッツァイオーロ」と呼ばれるピザ職人がいる。

店名しか情報がない場合、これらのワードの有無である程度ふるいにかけることができる。

【2】庶民の味方「アペリティーボ」!食前酒と前菜のラインナップをチェック

イタリアには「アペリティーボ」という独自の文化がある。これはいわゆるハッピーアワーのようなもので、夜の比較的早い時間に実施されるサービスだ。客は食前酒1杯を頼みさえすれば、おつまみ(=前菜)が食べ放題というシステム。基本的には着席ではなく立ち飲みで実施されているサービスであり、カウンターやテーブルの上にバイキング形式に並べられた前菜を、食前酒片手に自由に食べることができる。この「アペリティーボ」、イタリア人にとっては非常になじみ深いもので、待ち合わせの前に1杯ひっかけたり、帰宅前に軽く飲んだりと、庶民の生活に欠かせないものとなっている。

この文化に触れたことがあるシェフならば、食前酒と前菜のラインナップをおろそかにできないはず。なぜなら、食前酒と前菜がないと食事が始まらないからである。前菜の役割は「これから始まる食事の食欲を増進させる」こと。メニューをチェックして、前菜が豊富にある店を選ぶといいだろう。特に、色彩が豊かで楽しい前菜が多くラインナップされている店が理想的である。

【3】ピザやパスタで締めじゃない!メイン料理の有無を確認

イタリア料理を食べる際、「ピザ」または「パスタ」などの炭水化物を食べて食事を終えてしまう人がいるが、それは本当に勿体ないことである。日本人は「食事の〆」として、食事の最後にご飯や麺類などの炭水化物を食べることが多いため、ピザやパスタを食べると満足してしまうようだ。
しかし、イタリア料理の本当のメインは「肉」や「魚」であり、簡単なコースの場合でも、パスタはなくとも「肉」や「魚」はマストとされることが多い。メインを食べずに帰るのは、焼き鳥屋でお通しと雑炊だけ食べて帰るようなものだ。

これらのことから、肉や魚などのタンパク質のメニューがそもそもない店は、あまり信用しないほうがいいだろう。一方で、ドリンク・前菜・パスタだけを注文した際に「メインはどうしますか?」と聞いてくれるお店は期待ができる。なぜなら、メイン料理はたいていの場合手間と時間をかけて作られるものであり、最初にオーダーすることが互いにとって望ましいからだ。

【4】終わりよければすべてよし?「カッフェ」と呼ばれるエスプレッソの出来ばえ

日本でもおなじみの「バリスタ」という単語がイタリア語であることからも分かる通り、イタリア人がエスプレッソに懸ける思いは強い。イタリアにおける「コーヒー」は「エスプレッソ」を意味し、1日に平均して6杯のエスプレッソを飲むともいわれている。
そんなイタリア人にとって、食後のエスプレッソはなくてはならないもの。しかし、日本で美味しいエスプレッソを出しているイタリア料理店は実は案外少ない。ワインにこだわる店はいくらでもあるのに、エスプレッソにこだわる店が少ないのはなぜか?それは「エスプレッソマシン」と「抽出技術」の2つが関係していると考えられる。

ワインはきちんと保存さえしていれば、グラスに注ぐだけでその良さをおおよそ伝えることができる。一方で、エスプレッソの場合は「エスプレッソマシン」がないと淹れることができない。マシンは最低でも10万円程度、高いものは300万円以上と非常に高価であるうえ、マシンがあってもエスプレッソを上手に淹れる技術がないと宝の持ち腐れとなってしまう。
そのような状況の中、食事の最後を飾るエスプレッソにまで配慮が行き届いているかどうかで、その店の熱意や誠意が分かるのである。エスプレッソマシンとバリスタの有無、そしてエスプレッソの出来ばえは、イタリア料理店の1つの指標になるだろう。ちなみに、美味しいエスプレッソは淹れるのに最低でも30秒ほどかかるので、注文してすぐに出てくるエスプレッソには要注意である。

日本のイタリア料理は現地人も驚くハイレベルさ!

上記のチェックポイントにあてはまらないイタリア料理店も多くあると思うが、この4項目すべてを満たしている店はかなりの確率で良店だろう。筆者も過去にイタリア人を引き連れて日本のイタリア料理店を巡ったことがあるが、そのクオリティの高さに皆驚いていた。
イタリアの食文化を十分に理解し再現できる文化的背景を持ち、そこに日本人ならではの繊細さが加わった日本のイタリア料理は「イタリア人もびっくり!」な世界レベルの料理たちだ。4つのポイントを参考に、是非自分のお気に入りのイタリア料理店を探してみて欲しい。

 

この記事を書いた人

まずは店名を確認!本場の味が楽しめるイタリア料理店を見極める4つのポイント

小羽 椰子(Koba Yashi)

ライター

京都出身、東京在住。
大学にてマスメディアを専攻後、食品業界に10年勤務。現在2児の母。
得意分野は食、子育て、出産、女性の社会進出、英語、海外旅行、音楽など。
「よく食べ、よく飲み、よく笑う」が人生のモットー。
小気味良く、ほんのりとユーモアのある文章を目指し精進しています。

このライターに記事の執筆を相談したい

関連記事