アラフィフの憧れジュリア・ロバーツ代表作でわかる女の欲望とは

●幅広いファン層を持つジュリア・ロバーツ。彼女のヒット作のキャラクターを通して、各時代の女性の欲望をあぶり出す。
●『プリティ・ウーマン』90年代のシンデレラは、男と学の両方を獲得したい賢女。
●『エリン・ブロコビッチ』闘うシングルマザーが欲したのは、確固たる社会的地位。
●『食べて、祈って、恋をして』自分探し女子の目的は、強いハートと社会復帰の野心。
●最新作『ベン・イズ・バック』では、人は一人では生きられないという現実に直面し、アラフィフ・ジュリアが人生の答えを提示している。

現在、御歳51歳のジュリア・ロバーツ。同世代のアラフィフでなくとも、彼女のファン層は厚い。ジュリアの代表作といえば、1990年の『プリティ・ウーマン』、2000年の『エリン・ブロコビッチ』、2010年には『食べて、祈って、恋をして』がある。ほぼ10年おきに、話題作に主演しているといえる。私は、彼女ほど現代女性の欲望をスクリーンに映し出してきた女優はいないと思うのだ。振り返ってみると、その年代の女性が、どのような女性像に惹かれ、何を求めていたのかが見えてくる。そこで今回は、映画学マスター取得の筆者が、懐かしい作品から最新作まで、ジュリア・ロバーツが演じてきた女の生き様を、作品とともに解説したいと思う。

ハリウッド映画のヒロインは「男性に愛される存在」が理想だった

まずは、おさらいをしておきたい。かつてのハリウッドが世に送り出していたヒロインといえば「女らしさ」や「男性に守られる」といった形容詞がつく、ステレオタイプの女性像が圧倒的に多かった。わかりやすくいえば、変身後のシンデレラ。きらびやかで、男性から愛される存在が女性の憧れだった。例えば、1950年代に活躍した大女優といえばオードリー・ヘプバーン、グレース・ケリー、マリリン・モンローなどだが、彼女たちのスクリーン上のキャラクターを思い起こすと一目瞭然だ。

1960年代が進むにつれ、ウーマン・リブの波が起こり、男性に守られる対象ではないヒロインが出現してくる。男と対等に意見する女、男並みにタフな戦闘女、あるいは、男を翻弄する悪い女……。ハリウッド映画混迷期となる1960年代半ば以降、ブリジット・バルドーやカトリーヌ・ドヌーヴなど、小悪魔的な魅力を放つ女優がフランスから世界を魅了した。フランス映画の『エマニエル夫人』が大ヒットしたのも、1970年代だった。そして、時代は1980年代へ。トム・クルーズの『トップガン』や、アーノルド・シュワルツェネッガーの『プレデター』、シルヴェスター・スタローンの『ランボー3/怒りのアフガン』などが興行収入TOP10入りした80年代後半、いよいよジュリア・ロバーツがデビューする。

『プリティ・ウーマン』にみる90年代のシンデレラ像

フェミニズムも満遍なく浸透した1990年、私たちの間でヒットしたのは『プリティ・ウーマン』だった。今まで散々、男越えを目指していたにもかかわらず、リッチな実業家によってエレガントに変貌するコール・ガールに、女性は憧れたのだ。一見、保守回帰とも思えるが、その実は違う。

ジュリア・ロバーツが演じた主人公・ビビアンは、勝ち気で利発なコール・ガール。売春婦というとネガティブな印象を抱きがちだが、ビビアンは、自分を卑下することなく人生を楽しんでいる。映画は、リチャード・ギア演じるエドワードにプロポーズされたところで終わりではない。王子様を獲得した後、ビビアンはもっと知識を得たいと勉学の道へ進む。90年代のシンデレラは、男性に選ばれて奇麗になるだけでは満足せず、自分を高めたいと欲する賢女になっていた。

『エリン・ブロコビッチ』闘うシングルマザーの登場

10年後、女性はさらに自立する。2000年、ジュリア・ロバーツにオスカーをもたらした作品『エリン・ブロコビッチ』で彼女が演じたのは、闘うシングルマザーだ。2度の離婚歴があり、3人の子持ちだが学もなく職もない。アメリカの格差社会を体現する主人公・エリンは、したたかに自分の道を切り開き、ついには住民を率いて大手企業の不正を暴くという、ヒーローのような偉業を成し遂げる。

社会的には弱者であったエリンが欲したのは、皆からの尊敬といった目に見えない価値ではなかった。エリンは子供を養うため、弁護士事務所に押しかけて職を得る。再雇用の条件は、給料アップと健康保険の給付。精神的な自立など通り越し、現実的な生活の糧を生み出すこと、そして確固たる社会的地位こそ、2000年代の女性が手に入れたいものだったのだ。

ちなみに、ジュリア・ロバーツは、この映画で内容そのものといった交渉を勝ち取っている。それは、男性俳優並みのギャラである。それまでのハリウッドでは、女性俳優のギャラは、総じて男性より低かった。『エリン・ブロコビッチ』で、ジュリアは2,000万ドル(およそ22億5,000万円)のギャラを取得したと推定されている。これは、当時の主演男優と同等の金額であり、それほどの額を手にした主演女優はハリウッドで彼女が初めてだったともいわれている。

【参照】Julia Roberts Biography

『食べて、祈って、恋をして』癒しこそがすべての2010年代

愛される存在をクリアし、男性をも凌駕するほど働き、過労キャリアウーマンと化した女性が次に欲したものは何か?2010年、ジュリア・ロバーツが主演したのは『食べて、祈って、恋をして』。究極の自分探しの旅に出る女性の話だ。

積み上げたキャリアも家庭も一旦リセットして、主人公・リズが手に入れたかったもの、それは心の安定。瞑想修行の後、恋に走るリズの行動は、やはり男が必要なのかと思わせるが“行動のすべてが女性主体”という点を忘れてはならない。離婚を切り出すのも、旅する決断も、男の愛を受け入れるか否かを決めるのも「女」なのだ。

リズの恋の相手・フェリペは彼女に「君には、男より闘士が必要だ」と言う。つまり、リズは男がほしかったわけではない。揺るぎない強固なハートを持つことが、旅の最終目標だったのだ。現実社会である程度自己実現を果たし、望むものをすべて手に入れた2010年の女性は、野心を取り戻したかったのかもしれない。

『ベン・イズ・バック』で手にした誰かを想う気持ちと心を開く勇気

さて、2020年までカウントダウンが始まった。ジュリア・ロバーツは、次にどのような女性を演じてくれるのだろうか。2018年、50歳を超えた彼女の最新作は『ベン・イズ・バック』だ。この作品では、薬物依存症の息子を必死で守ろうとする母親・ホリーを演じている。

その様は時にヒステリックで、時にストイック。姿を消した息子を自分一人で探し出そうと、一晩中奔走する。しかし、夜明けとともに力尽き、最終的には再婚相手の夫にSOSの電話を入れるのだ。ホリーは、何を欲し、何を得たのか。私は、厳しくも全身全霊で愛し抜く存在を欲し、自分以外の誰かに心を開くことの勇気を手にしたように見えた。

「人は一人では生きていけない」最新作に込めた現代女性へのメッセージ

女性が欲してきたものは、単純なわかりやすいものから、時代と共に段々と複雑化している。ジュリア・ロバーツが演じる女性の感情もまた、一筋縄ではいかない葛藤がモチーフになってきた。あなたは、どの年代のジュリアに憧れただろうか。

「女一人でもやっていけるさ」と肩肘張った人生は潔いかもしれないが、人は一人では生きていけない生き物だ。時には周りの誰かに救いの手を求める、独りよがりではない人間関係を取り戻さねばならないのではないか。アラフィフ・ジュリアの最新映画からは、現代女性が乞うべきメッセージが読み取れる。

この記事を書いた人

アラフィフの憧れジュリア・ロバーツ代表作でわかる女の欲望とは

shizca

ライター/エッセイスト

元TVディレクター/プロデューサー。ロンドン大学大学院映画学科マスター取得。在英中よりTV・映画に関するコラムを連載。現在は東京で2児の母。
ファッションやアートの他、女性のライフスタイルについてのエッセイも執筆中。

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