2,000時間以上の実践で導き出した「マインドフルネス瞑想」のやり方と効果(ヘルスケアライター)

●ヴィパッサナー瞑想合宿やワークショップに通算で67日間参加し、2000時間以上の瞑想を行い、その効果を実感している筆者が語る、瞑想の実践と効果。
●瞑想とは、フロー状態に入るための有効な方法である。フロー状態は、マインドフルネス瞑想で培われる「今、この瞬間に注意を向ける」力の恩恵のひとつ。
●マインドフルネス瞑想では、今、この瞬間の「体験」に意識を向けることが大切。体験に意識的になり、その体験の良し悪しにとらわれず、ただそれを観察しよう。
●最初は10分くらいから始め、慣れたら徐々に時間をのばしていく。静かな部屋で背筋をのばし、楽な姿勢で取り組もう。
●実際に坐ってみると、意識がふらふらとさまようことに驚かされるはず。様々な思いつきにとらわれて、つい呼吸から意識が外れてしまうこともままある。
●意識がそれてしまう自分を、責める必要はない。もし、意識がそれることで自分を責めてしまうなら、責めてしまう自分の心をもただ観察しよう。

”意図的に、今この瞬間に、価値判断をすることなく注意を向ける”

 

Kabat-Zinn,1994

これが、マインドフルネスという言葉の定義です。そしてマインドフルネス瞑想とは、誰もが習得できる人生の技法のひとつです。このマインドフルネスな”今を生きる”という感覚に近づいていくに従い、あなたの人生は今よりもより良く、さらに幸福なものにならざるを得ないでしょう。

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わたしは、2015年3月にヴィパッサナー瞑想に出会いました。これは、ブッダが悟りをひらいたときに行った瞑想法で、マインドフルネス瞑想の元になっているとも言われています。以降の2年間で、瞑想合宿やワークショップに通算で67日間参加し、2000時間以上の瞑想を行いながらその効果を実感してきました。

この記事では、瞑想の実践者としての自身の体験を交えながら、正しい瞑想法とその目的・効果について解説します。

フロー状態でいることの効果

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“最高に集中して、しかもリラックスしているフローは、比較的日常的に起こすことができる。”

 

茂木健一郎オフィシャルブログ 「フローとゾーン」
http://lineblog.me/mogikenichiro/archives/1070670.html

チクセントハイミ博士が提唱したこの「フロー理論」については、ご存知の方も多いでしょう。試合中のスポーツ選手が最大のパフォーマンスを発揮しているときなどの、「フローに入っている」と言われる状態です。
フローに入っているときには、勝利や成功のような”成果”ではなく、今この瞬間の”行為”それ自体が目的となっています。また、長時間の集中の後でも深い眠りから覚めた後のように精神が賦活し、疲れを感じることなくいきいきとしています。

マインドフルネス瞑想で得られる「今、この瞬間に注意を向ける」という力は、このようなフロー状態を日常的に作り出すことにとても役に立ちます。そして、常時フローに近い状態でいることにより、ネガティブな考えや気持ちに振り回されなくなり、仕事や生活のパフォーマンス、睡眠の質が上がる――。これが、マインドフルネス瞑想で培われる「今、この瞬間に注意を向ける」力の、大きな恩恵のひとつです。

「自分という牢獄」から解放される

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“欲望、不安、自己のアイデンティティー、そういうものに取りつかれている限り、自分という狭い牢獄の中に閉じ込められ、現実の世界から、現実の人生から取り残されてしまう。この自己妄執から抜け出すことが、真に束縛から解放されるということなのである”

 

ウィリアム・ハート著 日本ヴィパッサナー協会監修 太田陽太郎訳 『ゴエンカ氏のヴィパッサナー瞑想入門』 (春秋社、1999年)

ひとは、常に自分という牢獄に閉じ込められている生き物です。そして、そこから抜け出すことで、真の自由を得ることができます。瞑想は、その牢獄から抜け出す手段のひとつです。

2012年に心理療法などを学び始めたわたしは、自分自身を「境界性パーソナリティ障害(BPD:ボーダーライン・パーソナリティ・ディスオーダー)」であると診断しました。境界性パーソナリティ障害は、以下のように定義されています。

”強い自己否定感や、人間不信と結びついた愛情飢餓に基づいた、見捨てられることへの過敏さ、情緒や対人関係の不安定さに苦しんでいる状態です。”

 

『ササッとわかる「境界性パーソナリティ障害」』 岡田尊司 講談社

当時のわたしは、他人の視線が気になって仕方がありませんでした。人からどのように見られているか、自分の言動は相手にどのような気持ちを起こさせているのか――。極端な自意識過剰で、常に心が休まらない状態だったのです。そんな苦しさから、心理学や心理療法を学び、実践する中で、心の安らぎを感じられるようになった技法が、瞑想でした。

シンプルな瞑想のやり方

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マインドフルネス瞑想では、今、この瞬間の「体験」に意識を向けていきます。体験に意識的になり、その体験の良し悪しにとらわれず、ただそれを観察します。ここでは、マインドフルネス瞑想の技法のうち、呼吸を使った瞑想について取り上げます。

1)楽な姿勢をとり、10分程度の短い瞑想から始める

まずはタイマーを用意します。最初は10分くらいから始めましょう。慣れたら徐々に、時間をのばしていきます。できるだけ気が散らないように、静かな部屋で坐ります。背筋をのばし、無理のない楽な姿勢をとりましょう。
正座やあぐらは、体が安定します。必要なら座布団を使ったり、クッションや毛布などで足の位置を調整したりして、楽に坐れるように工夫するのもよいでしょう。床座が困難な方は、椅子に座っても大丈夫です。背もたれにもたれず、手は軽く膝に置き、背筋をのばして座るのがポイントです。

2)呼吸に意識を集中させ、自身を観察する

落ち着いたら、目を閉じて、呼吸に意識を合わせます。息が鼻の穴を通って出ていく、入ってくる。鼻の内側を通る息の暖かさや冷たさ、乾くような感じ、湿った感じ。鼻の内側の壁に当たる感じ、息の強さや弱さ。その自然な呼吸に、ただ意識を合わせます。

実際に坐ってみると、意識がふらふらとさまようことに驚かされます。心は気まぐれに、昨日ちくりときた一言や、夕飯はカレーにしようという思いつき、忘れていた来月のチケットの予約まで、様々な想念を起こさせます。そんな思いつきにとらわれて、つい呼吸から意識が外れてしまうことは、ままあります。そんなときは強い呼吸を何度か繰り返しながら、意識を戻していきます。
ただ、今この瞬間に自分に起こっていることを、観察し続けます。妄想ではなく、呼吸という体に起こっている現実に目を向け続けていくのです。

意識がそれてしまう自分を、責める必要はありません。意識がそれたことに気づけることが大切です。もし、意識がそれることで自分を責めてしまうなら、責めてしまう自分の心をも、ただ観察しましょう。
また、頭の中で数を数えたり、吸って、吐いて、などの言葉を使ったり、イメージを思い浮かべることは、禁物です。あくまでも、呼吸を感じることだけに集中します。

「完璧な瞑想」がゴールではない

瞑想は、筋力トレーニングのようなものです。日々繰り返し行うことで、気づかぬうちに意識を集中する筋力がついていきます。瞑想を重ねているわたし自身も、意識をそらさずに集中し続けるのは、未だ困難です。呼吸を意識しながらも、同時に雑念が浮かんでしまうことも、たびたびあります。
しかし、集中できないことは、問題ではありません。完璧な瞑想ができることは、決して求めるゴールではないのです。ただ、その呼吸に意識を合わせていられる時間が少しずつのびていき、呼吸に集中できている度合いが少しずつ高まっていく。その行為のプロセスだけを目的としていくのです。

瞑想で人生の質が変わる

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瞑想を重ねるにつれて、わたしの人間関係は劇的に変化しました。自分の心の動きを観察して言葉にし、パートナーや信頼するひとたちに心をひらいて、深くコミュニケーションをすることができるようになりました。怒りやいら立ちを感じることが減り、心が少しずつ穏やかになっていきました。そして次第に、「思考や感情にとらわれている自分」と、「その自分を見ているわたし」という、二つの視点が生まれてきたのです。
起こっている体験に、不安や恐れなどのネガティブな意味付けをして、勝手に悩み苦しんでいるのは自分自身。そして、その感情と距離を置くことで、体験に意味付けをしていることに気づくようになりました。その意味付けを手放していけば、わたしは本来、ただ幸せでしかない。それが、実感として感じられるようになったのです。

この記事があなたの人生の質を変え、本来の幸せに気づいていく一助となることを、心から願っています。

この記事を書いた人

2,000時間以上の実践で導き出した「マインドフルネス瞑想」のやり方と効果(ヘルスケアライター)

なかおか ともみ

ライター・iPhoneフォトグラファー

北海道出身。東京都在住。サロン「エウレカ」主宰。
損害保険会社における交通事故の示談交渉担当・コールセンターの運営業務等を経て、フリーランスのライターに。2014年より、ネットラジオやレクチャーの主催業を行っている。
書籍や論文などの情報から、記事を構成することが得意。美容・芸能以外のテーマであれば、概ね執筆可能。社会・経済問題、働き方や個人の自立、食と住、心理・哲学・スピリチュアリティの分野に関心が深い。
日常のふとした瞬間を切り取るのが趣味。海外での長期滞在のために、英語のブラッシュアップ中。

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