皆さんが抱くプロレスのイメージはどんなものだろう?「痛そう」「怖い」などといった、マイナスなものが多いはずだ。結論を先に述べてしまえば、痛くないはずがない。日々、鍛え続けて我々の何倍もの体重で身体と身体がぶつかり合うのだから。
だが、そんなマイナスなイメージもひと昔前のことであり、今は違う。端正な顔立ちのレスラーが増え、それにより「プ女子(プロレス女子)」が急増している。テレビをはじめとした様々な方面で取り上げられているため、一度は耳にしたことがあるはずだ。プロレスに興味を持つ人は今後さらに増えていくことだろう。
そこで当記事では、大のプロレスファンである著者が、プロレスのコアな部分に着目してうんちくを紹介したいと思う。テーマは「レフェリー」だ。こちらでは、「こんなことまでする!?」と思えるような、レフェリーのコアな部分に着目してプロレスの新たな楽しみ方を探る。
レフェリーの役割・動きは若手選手の試合で学ぶべし
ほとんどの興行では、最初に若手の選手試合を行っている。若手はデビューして間もないため、当然ながらできる技や動きが限られてくる。基礎的な動きでの攻防になるため、選手と同時にレフェリーの姿を追いやすくなるのだ。まずはそこからスタートしてみよう。試合中にレフェリーがにどのような動きをしているのかがわかるはずだ。
フォール時のカウントや場外カウント以外にも、様々な動きをしている。例えば、締め技や関節技をかけられている選手への意思確認はもちろん、場外戦になった際にリングへ戻したり、セコンドの介入を阻止したり、これ以上技を喰らったら危険と判断した場合のストップなど……。もちろん、あくまでもそこは選手を”尊重”しなければいけない。
「あと少しでロープを掴めたのに……」
「ギブアップの確認にはハッキリ”NO”と答えたのに……」
こんなところで試合が止められたら、その選手は腹立たしいに違いない。
レフェリーは、どのタイミングで何をしなければいけないのかを瞬時に把握できなければいけない。重ねて人体の構造や仕組みも知っていなければいけない。一瞬の判断ミスが選手生命を分けるが、そこはさすがプロ、匠だ。選手とのやりとりにも注目してほしい。
注目すべきレフェリー2選
【1】大橋篤〜レフェリーとレスラー2つの顔を合わせ持つ男〜
まず、この動画を見てほしい。
大日本プロレスの大橋篤レフェリーだ。ここでは大橋について紹介をさせてほしい。この大橋は、同団体「フランク大橋」というリングネームでレスラーとしても活躍している。身長162cm、体重70kg。レスラーとしてはとても小柄ながら、気迫溢れるファイトで人気を博す。この様な”レフェリー兼レスラー”は私が知る限りでは類を見ない。
この動画は、タイトルマッチの試合中にレフェリングをしていたレフェリーが巻き込まれ急遽出場したが、そのときの試合に”不満がある”と緊急会見したもの。一言目から既にインパクトが強い。
しかし、私が言うのはそこに関してではない。1:09〜の試合ダイジェストだ。出てきて早々にかなり激しいカウントを取っている。かと思えば場外戦に移行し、あわや場外で決着がついてしまうのでは……というところまで攻防が展開された。
そこはレフェリーがリング内へ選手を戻そうとする。しかし今度は選手におちょくられてリング内部へ。これも制し、何とかリング上へ選手を戻す。息つく暇もなく今度は、(なぜか)リング内部に収納されていたボールを投げ合う、という攻防に巻き込まれた大橋は、さすがに我慢の限界。そして堪忍袋の緒が切れた。選手に怒りの張り手、綺麗なドロップキックまで披露している。だが、最終的には選手の反撃で続行不可能、無効試合として扱われた。
この試合には「大橋は選手でいいのでは。」という声も上がっている。もう一度言おう、大橋はレフェリーでありながらレスラーでもある。普通なら即搬送されてもおかしくない。まさに命がけである。
【2】レッドシューズ海野〜レフェリー中心の観戦にうってつけ〜
続いて紹介するのが、新日本プロレスのレッドシューズ海野(うんの)。2007年1月に審判部長に就任している。一際目を引く赤いベルト、赤いサポーターに赤いリングシューズ……これはレッドシューズ・ドゥーガンの影響だという。
今でこそ新日本のメインレフェリーで、「新日本のレフェリーといえば」という感じだが、海野は1988年7月4日に全日本プロレスでレフェリーデビューしており、元々は全日本プロレスのレフェリーだった。全日本出身レフェリーの持ち味である、大きなレフェリングが海野の特徴だ。フォールカウント3ギリギリでキックアウトすると、豪快に1回転することがあり、今でもその豪快な回転は健在。時にはフォールの姿勢に入った選手の頭上を飛び越え、そのままカウントを取ることもある。
現在50歳。実際にその動きを見てもらえばわかるが、とても50歳には見えない。
レフェリーに隠された沢山の魅力
試合を組み立てるのはもちろん選手なのだが、そこはレフェリーが試合を裁いてこそ。そうしなければ、永遠と決着がつかない。そして同時に「試合を観てくれている人に伝える」という役割も担っている。選手を引き立たせているのもレフェリーである。”縁の下の力持ち”とはこのことではないだろうか。
まだまだ山ほど語りたいが、読み飽きられては困るので、この辺りにする。いかがだっただろうか?この記事を読んで、プロレスマニアには今まで以上にプロレスを好きになってもらえたら、最近プロレスを観始めた人にはもっともっと魅力に気づいてもらえたら嬉しい。プロレスはどこまでも奥が深いスポーツなのである。
こうしている今も、どこかの会場で3カウントが入っていることだろう。