「大企業も安泰ではない」と言われて久しい今日この頃。事実、シャープは外国の企業に買収され、東芝は倒産の危機にさらされています。就活生や転職検討者の中には、「ベンチャー企業に就職(転職)してどこでも食べていける力をつけるんだ!」「もっと裁量をもって働きたい!」と考えている方もいらっしゃることでしょう。
それでは、ベンチャー企業に行けばそうした希望は(ある程度)かなうのか――。残念ながら、必ずしもすべてのベンチャー企業にあてはまるわけではありません。慎重に選ばないと、筆者のように「こんなはずでは……」というような事態になってしまいます。そこで今回は、筆者の体験も交えながらベンチャー企業選びに失敗しないための3つのコツをお伝えします!
【コツ1】経営陣を見極めよう
社長に経営の経験はあるか?
ベンチャー企業選びの際に何よりも重要なのが、経営陣の見極めです。まずは、社長に経営者としての経験があるかどうかを確認してみましょう。会社が危機に陥ったときにこそ、経験によって培われた大きな力が発揮されるからです。
事業が世の中の流れに乗れば、とりあえず投資家からお金は集まります。ただし、これはお金が集まっただけであり、社長に経営力があるわけではありません。筆者が以前勤めていた会社もそうでした。当時メディアで注目され始めた分野を事業としていたので、億単位でお金が集まりました。そして、お金を大事に使わずにどんどんリスクをとって拡大を図っていったのです。黒字化の見通しが立たないまま人を採用し、店舗を増やし、システム開発をし……。毎月かなりの赤字続きだったことを思い出します。。。
読者のみなさんは、「どうしてそんなにお金を使うの?」と思われるかもしれませんね。世間から注目を集めると人は、変わってしまうものです。「自分はできる」「自分の判断に間違いはない」と考えてしまうのでしょう。ある著名なビジネスマンはこれを「慢心(要は油断ですね)の時期」と呼んでいますが、この時期を経験なしに乗り越えることは非常に困難だと思います。
そこで、社長の過去の経歴と実績をきちんと見ることをおすすめします。過去に別の会社での社長経験はあるか、またはイチから事業の立ち上げを行った経験があるか、など……。社長という立場の人間は、会社全体を見ながら責任をもって判断しないといけません。そうした社長経験の有無は見極めの材料になります。
優秀なナンバー2はいるか?
同時に、優秀なナンバー2がいるかどうかも確認しておいた方がいいでしょう。優秀なナンバー2は、社長の言葉を社員に分かりやすく伝えることができます。正直にいいますと、社長には変わり者が多い気がします(笑) 。突拍子もないことを言いますし、結論しか話さない方もいますから、社員からすると「この人は何を考えているんだ?」となります。しかし、社長は頭の中でたくさんのことを考えていて、結論にいたるまでの流れを話さないだけなのです。
例えば、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズは若いころに変人であったことが有名でした。裸足でオフィスを歩いたり、部下を馬鹿にしたり、シャワーを浴びなかったり……。相当変人ですよね。ジョブズは一度アップルを追い出され、その後戻ってきてアップルの立て直しに成功します。もちろんジョブズが優秀だったからでしょうが、アップルの経営陣にジョブズとゆかりのある人物がいたことも関係していると筆者は考えます。つまり、ジョブズの言葉をジョブズとゆかりのある人物たちが分かりやすく伝えたからこそ、アップルは成功したと思うのです。スティーブ・ジョブズのような人物ばかりでは会社は成り立ちません。
面接時に確認しておきたいこと
面接時、社長や経営陣に聞いておくべきことを以下に挙げます。
・事業はどこで売上を出しているのか
筆者の経験でいうと、ここの見通しが甘いベンチャー企業は多いです。他社との差別化が図れておらず、人材や設備を用意してからようやく「売上はこれから考える!」と言い出すところもあります。。。
・事業を多角化しようとしているか
事業がひとつだけですと、その事業が失敗したときに挽回できません。
・お金を適切に使っているか
まだ売上が立っていないのに、会社の備品は新品(PCや机など)ばかり……といった事例もあります。はっきり言って、最初は中古品でもいいのです。また、投資いただいたお金を飲み代に使ったりということも……。資金の使い方を間違っていたら、いくらあってもお金は足りません。
これらの質問に十分答えられないようならそのベンチャー企業に行くのは止めるべきでしょう。会社の創業時は「ないない」尽くしです。お金も設備もそろっていません。つまり、唯一の拠り所は人なのです。
【コツ2】従業員を見極めよう
ここからは、ベンチャー企業で働く従業員の見極めについてお話しします。人数が少ないベンチャー企業では従業員も優秀でなくてはいけません。さきほどのコツ1でもお話ししたように、会社の創業時はお金も設備もそろっていません。ゆえに人が重要なのです。
それでは、どこを見ればよいのでしょうか?ひとつは従業員がただの兵隊か、裁量をもって仕事ができているのかを見るべきでしょう。「裁量をもって」というのは、「仕事が任されている」ことを指します。仕事が任されるということは自分で考えかつ自分の考えが仕事に活かされるということです。
中には社長の言いなり、つまり従業員が兵隊のようになっているベンチャー企業もあります。筆者が勤めていた会社はそこまでではありませんでしたが、「なかなかこちらの意見が吸い上げられないな~」という場面は多々ありました。つどつど細かいことも社長に許可を得ないといけなかったので、根回しが大変だった記憶があります(汗)。
成長していくベンチャー企業は、ある程度従業員に判断が任されています。任された従業員は失敗しながらも学び、そして的確な判断ができるようになるのです。というより、任されなければ従業員はいつまでも伸びません。そして、従業員は現場の課題を上に相談するようになるので、会社が良い流れで回り始めます。
従業員と会う機会があれば、どのような場面で仕事が任されていると感じるかを、具体的にいくつか挙げてもらいましょう。また、会社の課題も挙げてもらえればなお良いです。具体的に語れないようでしたら、そのベンチャー企業は単なる兵隊を求めている可能性があります。
【コツ3】あなた自身を振り返ろう
最後に、読者のみなさんにご自身を振り返っていただきたくこの見出しをつけました。突然ですが、みなさんが仮に希望のベンチャー企業へ就職(転職)して倒産の危機に直面した場合、それでもそのベンチャー企業で頑張ることはできますか?
もし「いやそれは難しいな」「転職しちゃうかも」と少しでもお考えなら、ベンチャー企業への就職(転職)はおすすめしません。結局ベンチャー企業で過ごす時間は実りのないものになってしまうでしょう。また、短期で辞めようものなら次の転職も難しいです。なぜなら、採用する側に「どうせすぐ辞めるんでしょ?」と思われてしまうからです。
何を隠そう、筆者がそうでした。会社の事業が軌道に乗らず、社長との意見が合わずと、外部環境のせいにして転職したときの気持ちを忘れてしまいました。そして仕事への熱意も冷め、辞めてしまったのです。
みなさんには「ベンチャー企業で挑戦しよう!」と思ったその気持ちと、そもそもベンチャー企業でやりたいことを今一度確認していただきたいと思います。そしてそれらを忘れないでください。忘れずにいれば、ベンチャー企業で過ごす時間は実りあるものになるはずです。