「序章」だけで内容がわかる!オチから読み解く“学術・ビジネス書の速読法”

●学術書やビジネス書は小説とは違い、あらかじめ「オチを知っておく」ことが大事。
●本文は全部読まなくても問題ない。
●どんなにボリュームがあっても「序章」を読めば内容は理解できる。
●「序章」は「著者の主張の要約」である。

「読書で教養を身につけたい」「いま話題のビジネス書を読んでみたい」と思ってはみるものの、本のボリュームに尻込みしてしまった経験、皆さんもあるのではないでしょうか。ページ数が多い本は、どうしても骨折りでつらいイメージがつきまとってしまいますよね。

私も、かつてはそうでした。大学院にいた頃、次から次へと読まなくてはならない本に追われ、実際にヒイヒイ言っていた口です。かたや大学教授たちは立派な蔵書を持ち、いつもいろいろな本を読んでいて、当時の私は「読書も才能なのかな」と羨んでいたものでした。しかし、実はそうではありませんでした。丁寧に読み込まなくても、本の要点をつかむコツがあったのです。

一般的に読書は「章を順番に読み進める→内容を理解できる」と考えられがちです。しかし私がおすすめしたいのは、この逆の発想です。つまり「あらかじめ本の内容を把握する→各章を好きなところから読む」という方法。学術書やビジネス書の内容を把握するには、「オチを先に知ること」が大事なのです。本を読む時間をなかなか確保できない方、最後まで読み進められずに挫折してしまう方に、この読書法をおすすめします。

学術書・ビジネス書と小説は似て非なるもの

オチを先に知る――。もちろん、このやり方を小説に適用するのは難しいでしょう。物語は「過程」と「オチ」で成立しています。ワクワクしながらページを追いかけて「オチ」に向かうのが、なんといっても小説の醍醐味です。先に「オチ」を知ってしまっては、小説を読む意義をほとんど失ってしまいます。

学術書やビジネス書も、構造自体は小説と似ています。論理の積み重ねの先に結論があるわけですから、「過程」と「オチ」という捉え方ができます。しかし、小説とは明らかに違って、学術書やビジネス書は、「オチ」(結論:著者の主張)を先に知ってしまっても、まったく問題がありません。そもそもこの手の書物は、多くの場合、すでにタイトルの時点でネタバレしているのです。

例えば、高名な進化生物学者であるリチャード・ドーキンスの著作に、『進化の存在証明』というものがあります。一目見ただけで、彼が何を言いたいのかわかりますよね。ドーキンス博士がその本で主張したいのは、表題を読んで字のごとく、「進化は存在している(=単なる概念上の仮説じゃない)」ということ。それが本の内容のすべてであり、分厚いページを割いてまで著者が読者に伝えたかったメッセージ(オチ)なのです。

タイトルの時点でネタバレするなんて、よく考えてみれば、小説ではありえません。しかし、それゆえに読者はその本を手に取りたくなるのでしょう。学術書やビジネス書は「結局、著者は何を主張したいのか?」というオチの部分をあらかじめ知っておくことが肝要なのです

とはいえ、いくらタイトルで「オチを先に知る」ことができても、学術書やビジネス書の内容を理解できるわけではありません。さすがに情報量が少なすぎます。しかし、内容を理解するのに本文を読み込む必要はないのです。むしろ、学術書やビジネス書は「最低限のリーディングで内容を理解することができるようになっている」とすらいえるでしょう。ポイントは「序章」。これだけを抑えておけば、あとは本文を流し読みするだけで十分なのです。

「序章」は著者が言いたかったことが要約された文章

ページの冒頭にほぼ必ずあるのは「序章」や「はじめに」です。これらの部分を、単なる「前置き」と捉えている方が多いのではないでしょうか。そのため「序章」や「はじめに」は読み飛ばされてしまいがちです。

しかし本当は本文よりも「序章」のほうが重要と言っても過言ではありません。なぜなら「序章」は著者がその本で読者に伝えたかったこと、つまり「結局この本は何が言いたかったの?」という核心を要約しているからです。

では、どうして「序章」は本書の「要約」にあたるのか。それは、多くの場合に「序章」がその本の最後に書かれている章だからです。「序章」と聞くと、著者が最初に書く部分だと想像しがちですが、実は違います。「序章」は、読者に自分の主張をいち早く知ってもらうために書かれる「つかみ」の部分。だからこそ、著者は本文を書き終えたあと、内容に沿いながら、全体を通して主張したかった「要約」を「序章」で示すことになるのです。

「序章」を読んだら、目次を見て好きなところを読もう

著者の主張を理解したあとは、少しページを戻して目次を開きましょう。目次は、結論を構成する部品であり、どのように論理が展開していくのかという進行シナリオです。ここで注目すべきは、それぞれの目次タイトル。これらは、各章の「要約」をする役割を果たしています。あなたはこの時点で、すでに著者の用意している「オチ」を知っています。それゆえ、目次タイトルの意味を著者の主張と深く意味づけて理解できるのです。

まずは『進化の存在証明』の目次と節のタイトルを、いくつか例として挙げてみましょう。

第一章 理論でしかない?
・理論とは何か?
・事実とは何か?

第三章 大進化にいたる歓楽の道(プライムローズ・パス)
・最初に花を育種したのは昆虫だった
・あなたこそ私の自然淘汰の産物

第五章 私たちのすぐ目の前で
・実験室における4万5000世代の進化
・グッピー

第十一章 私たちのいたるところに記された歴史
・かつて栄光につつまれた翼
・失われた眼
・知的でない設計

もうこの時点で、誰かに「あの本はどんな内容なの?」と尋ねられたとき、“たとえ本文をほとんど読んでいなくとも”スパッと要点をつかんで答えられるようになっていることでしょう。例えば先程紹介したドーキンスの『進化の存在証明』は、こう説明できます。

これまでドーキンスは、多くの著作のなかで【進化】という概念を説明してきたが、今日の進化論否定派は、進化の証拠が不在であるという点を強調している。それを受けてドーキンスは、進化が【科学的事実】であるということを本著にて証明していくのであった

具体的に知りたいことがあれば、あとは各章を好きなところから読んでいけば疑問は晴れていきます。繰り返し言いますが、いまさら順番に読み進める必要はないのです。すでに本書の「過程」と「オチ」を理解しているのですから、つまみ読み・ななめ読みでもスッと頭に入ってきます

序章で著者の要点をつかめば本書の理解が深まる

「序章」→「目次」→「任意で本文を読む」――。これらの作業は、正味1時間もあれば十分でしょう。それだけで「全体の理解」と「具体内容の理解」が可能になります。私の知る限り、このような短時間で本書の核心をつかむ速読法は、多くの研究者が実践しています。私が大学院にいた頃に培ったこの方法を、ぜひ皆さんも試してみてください。

この記事を書いた人

「序章」だけで内容がわかる!オチから読み解く“学術・ビジネス書の速読法”

石山 広尚(いしやま ひろなお)

ライター

北海道札幌市在住。
大学院卒。経済学と社会学を専攻。社会系の記事が得意。毎日ブログを更新して日々修行中。現在、小説サークルを主宰している。創作好きが講じて、最近はブログで批評も行っている。「なぜ面白いのか、なぜ面白くないのか」を徹底して分析しなければ気が済まないので、一度語らせると超しつこい。

・ブログ
http://modikaki.com/

・Twitter
@kangaeru_com

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