栽培面積は全体の7割以上!日本人に愛される「やぶきた茶」の特徴とおいしい淹れ方

●日本で栽培されている7割以上が「やぶきた茶」。
●やぶきた茶がここまで普及したのは味も高品質で、育てやすく殖やしやすいため。
●やぶきた茶は濃厚な甘みとスッキリとした香りが特徴のお茶。
●適度な甘みや渋みがあり、香りやコクも楽しめる優秀な品種。
●煎茶から玉露まであらゆる種類のお茶ができる。
●ただし玉露はやぶきたよりも個性的な品種で作られることが多い。
●やぶきた茶は普及率が高いため全国のお茶の基準値としてよく使われる。
●農林水産省はやぶきただけでなく、収穫時期の違う品種の栽培も推奨している。

みなさん、お茶はお好きですか?筆者である私は、麦茶、日本茶、紅茶と毎日いろいろ飲みます。とはいえ、お茶を毎日飲んでいる人であっても、その詳しい種類や特徴についてまで知りながら飲んでいるという人は多くないでしょう。かくいう私も知らない側の人間です。植物については常日頃から興味があるので、比較的調べている方だとは思うのですが、日常的に触れているお茶については「そういえばあまり知らないなぁ」と。
そこで今回は、自分にとっては一番身近なお茶、「日本茶」について調べてみることにしました。しかし一度気合いを入れて調べてみると、お茶の世界が広すぎて、調べても調べても終わりが見えません。お茶って奥深い……。

ということで、今回はテーマを絞って、2017年現在日本のお茶の木の7割以上を占めていると言われる「やぶきた茶」にテーマを絞って調べてみることにしました。絞ってもなお奥深かったですが……。
お茶を調べるんだからここは飲み比べだろう!そう思ってアマゾンで検索。「高いよ!玉露高い!無理!」とお金がないので挫折しまして、今回はインターネットで得られる情報を活用して記事をまとめることにいたしました。飲み比べは、また後日、お金がたまったらやってみますから……。

当記事では、やぶきた茶について調査した内容を、ざっと短めにまとめてみました。ご一読いただいて、「へぇ、やぶきた茶ってこんななんだ。」と面白がっていただければ幸いです。

日本茶はほとんどが「やぶきた茶」

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静岡の農家によって発見された品種

やぶきた茶はお茶の木の品種の名称であり、明治時代に静岡のお茶農家杉山彦三郎氏によって発見されました。明治から大正の頃、お茶の木は「実生」といって種から育てられていましたが、育った木によって性質が異なるため品質が安定せず、期待した収穫ができないこともしばしばでした。そのため、品質が優秀で育てやすく、繁殖もしやすい品種の発見が急がれており、その当時発見されたのがこのやぶきたというお茶の木です。

現在お茶の栽培面積の7割以上を占めると言われているやぶきた茶は、このとき発見されたお茶の木から栄養繁殖(挿し木)で殖やされたもの。つまり、全国にあるやぶきた茶はこの静岡にある一本の茶樹が元となっているのです。このやぶきた茶の母樹は静岡県の指定天然記念物として、現在も大切に栽培されています。

育てやすく殖やしやすいやぶきた

やぶきた茶の特徴として、幅広い土壌に対応して育成し、繁殖も比較的容易であるということがあります。繁殖や育成に手間がかからず、収穫量も安定しているこの品種は、農家にとってうれしいものでした。
発見当初はそれほど普及しませんでしたが、静岡県の奨励品種となったことで全国に一気に普及して行き、今日のような広大な面積で栽培される品種になったのです。

濃厚な甘さとスッキリとした香り

やぶきた茶の味の特徴は、「濃厚な甘さ」そして「スッキリとした香り」です。甘みを強く感じられるのに、香りはさわやかという特徴は多くの日本人の好みにマッチしていたため、全国で広く飲まれるようになりました。

やぶきた茶のおいしさとは?種類ごとの正しい淹れ方

適度な甘みと渋み、スッキリとした香りとコク

やぶきた茶はお茶の味も優秀です。茶葉には適度な甘さと渋さがあり、ほどよい温度で淹れることにより、バランスの取れた甘さと渋さを感じることができます。
お茶の色はあざやかな黄緑色から緑色で美しく、香りもスッキリとさわやかなもの。飽きの来ない味わいや、適度な甘み渋みに加えて、しっかりとしたコクも味わうことができるという優秀な品種です。

もっとも一般的な「煎茶」

煎茶は日本でもっともよく飲まれている種類のお茶で、ほとんどがやぶきたから作られます。収穫した生の茶葉を高温で蒸して過熱することで発酵をストップさせ、日本茶の特徴である甘みや渋みを引き出しています。

お茶を淹れるのに適したお湯の温度は約80度。沸騰した水を一度湯のみに移し、温度を下げてから急須に注ぎます。30秒ほどおいてからゆっくりと湯のみに注ぐことで、ちょうどよい甘みと渋みが味わえる状態になります。
やぶきた以外の品種では、埼玉県の試験場が開発した「さやまかおり」、静岡県金谷にある試験場で育成された「かなやみどり」などの品種も煎茶によく使用されている品種です。

「さやまかおり」は濃厚な香気が特徴でかつカテキン含有量が多い品種のため、やぶきたよりも香りと渋みを楽しめます。「かなやみどり」は、やぶきたにはないミルクのような甘い香りがあります。

濃い水色とお茶の味が味わえる「深蒸し煎茶」

深蒸し煎茶とは、煎茶よりも蒸す時間を長くして緑茶の成分を出しやすくしたお茶です。時間をかけて蒸されることにより茶葉が細かくなり、お茶の色が濃く出ます。
煎茶に比べると甘みが強く渋みは控えめで、茶葉自体が一部粉になっているため、水に溶け出さない成分も直接摂取できるというメリットもある種類のお茶です。
淹れ方は煎茶と同様お湯の温度は80度前後。浸出時間は約30秒が目安です。品種についても煎茶に使用される品種で製造されています。

お茶の甘みがもっともよく味わえる「玉露」

玉露とはお茶の木に日光を遮る覆いを20日ほどして収穫したものです。覆いをすることで渋みを生み出す成分の生成を抑えて、甘みが強いお茶を収穫することができます。香りは海苔のような香りです。
お茶の淹れ方は玉露の持つ甘みを最大限引き出すため、煎茶よりも低めの60度のお湯で。沸騰したてのお湯を湯飲みに移し、さらに別の湯飲みに移して冷ました上で急須に注ぎます。急須で2分ほどじっくりと甘みを引き出してから湯のみに注いで出来上がりです。

玉露に関してはやぶきたで栽培されているものもありますが、より葉がやわらかく茶葉の色が鮮やか、などといった特徴のある品種で多く作られています。主に「あさひ」「さみどり」「うじひかり」といった京都の在来品種で栽培されることが多いです。

渋みが少なくまろやかな味わい「かぶせ茶」

玉露が日光を遮る期間が20日間であるのに対し、かぶせ茶は10日間ほど日光を遮ります。玉露ほど甘さが際立ってはいませんが、渋みを抑えたまろやかな甘さが特徴です。
淹れ方は玉露と同様で、低温のお湯でじっくりと甘みを引き出してからいただきます。栽培品種も玉露と同じ品種で作られることが多いようですが、管理の手間が玉露よりもかからないのでさまざまな品種で作られています。煎茶と玉露の中間のような味わいのあるお茶です。

日本のお茶の基準値「やぶきた茶」

「煎茶といえばやぶきた」という状況の昨今、やぶきた以外の品種のお茶を評するときに「やぶきたと比べてどう○○だ」と評価基準として使用されることも多く、全国に広く普及しているお茶です。
また、やぶきた茶は農林水産省に「茶農林6号」として登録され、品種改良のベースとしてもよく使用されています。農林水産省はやぶきた茶が7割以上を占めている現状が、労働時期の一極集中を招き、茶葉の収穫に遅れを生じさせ品質の低下を招いているとして、これら品種改良によって生み出された収穫時期の異なる品種の栽培を奨励しています。
今後は全国の茶農家や農業試験場の努力により、さまざまな種類のお茶の木が栽培され、多様な見た目や香り、味が楽しめるようになるのかもしれませんね。

この記事を書いた人

栽培面積は全体の7割以上!日本人に愛される「やぶきた茶」の特徴とおいしい淹れ方

tossi

ライター

静岡出身、東京在住。
夫と息子1人、猫一匹(メス)と東京郊外に暮らすアラフォーの主婦。在宅で細々とライターをしながら猫の額ほどの庭で、雑草伸ばし放題のなんちゃってイングリッシュガーデンと、節約のための家庭菜園にいそしむ。得意なものはゆるい解説。苦手なものは「意識高い系」。

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